NOVEL

『ダークスレイヤーの帰還』

第五話 ゴシュと骨付き肉・前編

第五話 ゴシュと骨付き肉・前編──ゴシュの語る回想。 ゴシュの頭を、古い革鎧の匂いのする手が少し乱暴に撫でていた。「よう娘っ子! 今日は縞狼しまおおかみを見つけてな。可哀想に母狼は人間に半矢はんや(※矢が刺さってもとどめに至らずとり逃してし...
『ダークスレイヤーの帰還』

第四話 不帰の地と、うごめく闇

第四話 不帰の地と、うごめく闇 一か月ほど前。 魔の国キルシェイドの南方、古代の地名ではヴァンセンと呼ばれていた地域。現在は『不帰かえらずの地』と呼ばれる地域の森の中を、四人の冒険者が探索していた。 彼らは大プロマキス帝国の由緒ある探索者た...
『ダークスレイヤーの帰還』

第三話 ギゼとシトラ

第三話 ギゼとシトラ 夜もだいぶ更けた西の櫓やぐらのルインの部屋には、まだ煌々と光を放つ水晶と魔導の灯火の明かりが灯っている。「……よって、我が国セレウロは小国ではありますが……」 腕輪の姉妹の妹レティスの心揺らす美声が古王国の小国からの挨...
『ダークスレイヤーの帰還』

第二話 眠れぬ夜の密談

第二話 眠れぬ夜の密談 影人かげびとの皇女クロウディアは、しばしば見る悪夢の中にいた。「ダーサお父様、マヌお母様!」 影人の帝国、インス・オムブラの繊細かつ荘厳な宮殿、アンルーシェの広間を、クロウディアは両親の名を叫びつつ走っていた。──ク...
『ダークスレイヤーの帰還』

第一話 緑肌の娘と、狼の魔女

第一話 緑肌の娘と、狼の魔女 春も深まる魔の都オブスグンドの『西の櫓やぐら』では、眠り女たちが広いバルコニーで手合わせや鍛錬をしており、その掛け声を遠くに聞きつつ、ルインとチェルシーはウロンダリアの地図を広げて、古代の魔王スラングロードの城...
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吸血鬼の都アンシルヴァル・後編

吸血鬼の都アンシルヴァル・後編 『銀の指のダリヤ』の戦技せんぎはホールの天井に隠されていたと思われる、無数の球体関節きゅうたいかんせつの人形たちを呼びだした。道化のようなもの、すらりとした少女のようなもの、騎士のようなもの、太った巨人のよう...
『ダークスレイヤーの帰還』

吸血鬼の都アンシルヴァル・前編

吸血鬼の都アンシルヴァル・前編──これは、眠り人ルインが目覚める少し前の話。 ウロンダリアは黒曜石こくようせきの都オブスグンド。その大城壁の西の櫓やぐら、眠り人の寝所。「チェルシーさん、眠り人様は今日もお目覚めには?」 暗い茜色あかねいろの...
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氷の碧、炎の黒

氷の碧、炎の黒※『雪の白、血の紅』のエピソードの続きとなります。──私もまた、色の無い花でいい。 無限世界イスターナルの外周を囲む冷たい終焉しゅうえんの領域、氷獄クエリス。 再び長い年月が流れていた。かつてサリヤと呼ばれ、その後氷の女王と呼...
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雪の白、血の紅

雪の白、血の紅──世界は愛に溢れているけれど、人の心には愛がない。私の心にも。──冷たいディレニスの碑文より。 無限世界イスターナルの辺境、冷たいディレニスという世界。 黄金の鎧よろいを着こんだ主神にして王、戦神せんしんコルベックは、快晴な...
『ダークスレイヤーの帰還』

落花流水、泥沼蓮華

落花流水らっかりゅうすい、泥沼蓮華でいしょうれんか 魔の国キルシェイドの黒曜石の都オブスグンド、ある夜の西の櫓やぐら。 金庫室で帳簿ちょうぼの管理をしていたチェルシー、アゼリア、シェアの三人は、今月の寄贈金きぞうきんの収益、支出のまとめを終...