『ダークスレイヤーの帰還』

『ダークスレイヤーの帰還』

第二話 影と鎖

第二話 影と鎖──西の櫓やぐら、午後。 ルインの思わぬ申し出に、影人の皇女クロウディアは驚きの声を上げた。「ええ⁉ もう私と立ち会い? ……こんなに早く? ……本気なの?」「早い方がいいだろう? それに覇王ウロンダリウスの霊廟れいびょうの探...
『ダークスレイヤーの帰還』

第一話 依頼の山

第一話 依頼の山 魔の国キルシェイドの首都、『黒曜石の都』オブスグンド、その大城壁の西の櫓やぐら、眠り人の仮の寝所。 暑くも寒くもない、快適な春の朝だった。気分良く目覚めたルインは周囲を見回し、天井には既に朝の光が照り返しており、今日も良い...
『ダークスレイヤーの帰還』

プロローグ2・少年はその本を読む『ダークスレイヤーの帰還』

無限世界むげんせかいにおいてしばしば『永遠の地』と呼ばれるウロンダリア。その中心地域の上空には空に浮かぶ大陸や少なくない国々も存在していた。 このウロンダリアには特に古く由緒ある『八つの古王国こおうこく』と呼ばれる大国が存在している。ここは...
『ダークスレイヤーの帰還』

プロローグ1 最後の眠り人

「全てが漂着する地」……人はそこを古代の大王にちなんでウロンダリアと呼ぶ。 時間さえ曖昧で、人や神や魔はもちろん、世界まで漂着するこの地には、『眠り人』と呼ばれる存在が流れ着くことがあった。永い眠りののちに目覚めた彼らは素晴らしい技術や知識...
『ダークスレイヤーの帰還』

陽炎の憂い・後編

陽炎かげろうの憂い・後編 無限世界イスターナルのかつて見捨てられた地ウダル・カ・ラ。破局噴火にも奇跡的に残ったマリーシア神殿。 陽炎かげろうの武神マリーシアと、『闇の王』ゴルムオーズの静かな対峙を最初に破ったのはゴルムオーズだった。「黙れ界...
『ダークスレイヤーの帰還』

陽炎の憂い・前編

陽炎かげろうの憂い・前編 無限世界イスターナルの遠い昔。界央セトラの地を取り巻く十の『至聖下しせいかの地』の一つ。『栄光』の地平、ホーダー。 後の時代に『原初げんしょの大征伐だいせいばつ』と呼ばれる原始世界の平定を行った神々は、そのほとんど...
『ダークスレイヤーの帰還』

氷獄のふたり・後編

氷獄クエリスのふたり・後編 無限世界イスターナルの外側、世界の終焉とされる凍てついた領域、氷獄クエリス。 崩落と共に開いた巨大な暗い縦穴を、三眼有角の黒馬に乗ったダークスレイヤーとサーリャは静かに降下していた。 もともと暗い領域である氷獄ク...
『ダークスレイヤーの帰還』

氷獄のふたり・前編

氷獄クエリスのふたり・前編 無限世界イスターナル及び各世界の冷たい最果て、氷獄クエリス。 氷の花が永劫の吹雪に揺らぐ様を氷の月が冴え冴えと照らす。そんな冷たい静寂を見下ろす氷の山脈の頂で『氷の女王』サーリャは氷塊に座して静かに瞑想していた。...
『ダークスレイヤーの帰還』

第二十七話 見えざる病と混沌と

第二十七話 見えざる病と混沌と 『黒き国』オーン、『蔦つたの王宮おうきゅう』の大議場。 ファリスの厳しい声が議場に響く。「ガルマ王、かつて私と考えを異にした責を感じて隠していたのね? つまりこれは……」 ファリスは目もうつろに痩せこけた『中...
『ダークスレイヤーの帰還』

第二十六話 蔦の王宮

第二十六話 蔦つたの王宮 『黒き国』オーンのとある秘匿ひとくされた通路。 ファリスは青と白の複雑な鉱脈が縞模様しまもようを描く洞窟に立っていた。遠い昔に化石化した世界樹の道管どうかんであるこの通路は、白い鉱脈が地上の日の光をここまで届かせて...