『ダークスレイヤーの帰還』

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白き竜は神聖乙女を乗せて

白き竜は神聖乙女イス・ファルタを乗せて 工人アーキタの都市国家とバルドスタの騒乱が落ち着いた日の未明。 聖王国エルナシーサの薄明の空中庭園の中央に一筋の光が落ち、重厚な聖扉せいひが現れると、神聖乙女イス・ファルタラルセニアと、肩に乗ったイタ...
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第十話 災いの予感・前編

第十話 災いの予感・前編 時間は眠り人が工人アーキタの都市国家に出発した頃にさかのぼる。 雪のちらつく暗い空の下には高い連山があり、それらの頂きに囲まれ、見守られるような高い平地があった。そこだけは多くの建物の窓から漏れる明かりと、尽きる事...
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第九話 翡翠戦争

第九話 翡翠戦争 南方新王国なんぽうしんおうこくから工人アーキタの都市国家ピステに向かう機関車『鉄の駿馬号』。その特等客室のサロン。 あらゆる魔法的な効果を打ち消す鉛によって壁内が守られているサロンの中で、古き民の王族の女性セレッサと、眠り...
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第八話 車窓の内外

第八話 車窓の内外 南方新王国なんぽうしんおうこく、資源生産国ケイメルテ。蒸気機関車『鉄てつの駿馬しゅんめ』内。 深い青色と少しの銀という色合いの制服を着た乗務員の案内によって、眠り人一行は特等の客室へと通された。磨かれた古木の内装は青を帯...
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第七話 鉄の駿馬

第七話 鉄の駿馬 翌朝。 大国『バルドスタ戦教国せんきょうこく』の介入間近の緊張状態にある工人アーキタの都市国家のひとつピステ。ルインと、彼に同行する眠り女たちはアゼリアとチェルシーからこの都市へのやや面倒な行程に関する説明を受けていた。 ...
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第六話 遠く懐かしきラーナ・ハーリ

第六話 遠く懐かしきラーナ・ハーリ 西の櫓やぐら、ルインの部屋。「昔話? おれの記憶に関係があると?」 ルインの問いに、腕輪の姉妹の姉、フリネは無言で微笑んで頷うなずく。一方、隣にいる妹のレティスはフリネとルインの様子を交互に見ていた。「そ...
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第五話 工人と古き民

第五話 工人アーキタと古き民アールン 西の櫓やぐら、大浴場。 白い幔幕まんまくで仕切られた広い風呂で湯につかったルインは、手のひらに小さな黒い火を呼び出して記憶を手繰るように眺めていた。しかし、ぼんやりと思い出されるのは全て激しくも遠い戦い...
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第四話 驚愕の市場、不穏な兆し

第四話 驚愕の市場、不穏な兆し──魔の国、黒曜石こくようせきの大魔城オブスガル。その大広間。 肩をすくめるようなラヴナの言葉に上魔王じょうまおうシェーングロードは無言で頷き、話を続ける。「ラヴナの言う事も同感ではある。まず、この黒曜石の都に...
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第三話 火急の事案

第三話 火急の事案──西の櫓やぐら、バルコニーをのぞむ部屋 クロウディアとの手合わせを終えたルインは腕の怪我をシェアに診てもらっていた。しかし、シェアはルインの傷跡を何度も注意深く見ては首をかしげて困惑している。「ルイン様、こうして見ている...
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第二話 影と鎖

第二話 影と鎖──西の櫓やぐら、午後。 ルインの思わぬ申し出に、影人の皇女クロウディアは驚きの声を上げた。「ええ⁉ もう私と立ち会い? ……こんなに早く? ……本気なの?」「早い方がいいだろう? それに覇王ウロンダリウスの霊廟れいびょうの探...