『ダークスレイヤーの帰還』

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第三話 春の宵の下

第三話 春の宵よいの下 帰ってきた眠り女の顔合わせや、最近のピステでの事、ルインの状況の説明などを兼ねた宴会の席が、『西の櫓やぐら』でささやかに開かれていた。酒も出始めたあたりで席を立ったルインは、魔の都の喧騒や下の階の宴席での声を遠くに聞...
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第二話 戻り来る眠り女たち

第二話 戻り来る眠り女たち 西の櫓やぐら、ルインの部屋。 暗い瞳のベネリスとの話は続く。「『殺し屋』という表現に、顔色を全く変えないのですね」 ルインの真向かいに座るベネリス。ふわりと、奥ゆかしい高貴な香りが部屋に漂う。「変に遠回しな表現を...
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第一話 暗い瞳のベネリス

第一話 暗い瞳のベネリス ルインたちが工人アーキタの都市国家ピステに向かう機関車に乗って二日目の夕方、魔の都オブスグンドの『驚愕きょうがくの市場』の近くに大きな取引所を構える、『オード・ブラッド商会』の会員制のサロンには、高いワインと高級な...
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白き竜は神聖乙女を乗せて

白き竜は神聖乙女イス・ファルタを乗せて 工人アーキタの都市国家とバルドスタの騒乱が落ち着いた日の未明。 聖王国エルナシーサの薄明の空中庭園の中央に一筋の光が落ち、重厚な聖扉せいひが現れると、神聖乙女イス・ファルタラルセニアと、肩に乗ったイタ...
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第六話 遠く懐かしきラーナ・ハーリ

第六話 遠く懐かしきラーナ・ハーリ 西の櫓やぐら、ルインの部屋。「昔話? おれの記憶に関係があると?」 ルインの問いに、腕輪の姉妹の姉、フリネは無言で微笑んで頷うなずく。一方、隣にいる妹のレティスはフリネとルインの様子を交互に見ていた。「そ...
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第五話 工人と古き民

第五話 工人アーキタと古き民アールン 西の櫓やぐら、大浴場。 白い幔幕まんまくで仕切られた広い風呂で湯につかったルインは、手のひらに小さな黒い火を呼び出して記憶を手繰るように眺めていた。しかし、ぼんやりと思い出されるのは全て激しくも遠い戦い...
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第四話 驚愕の市場、不穏な兆し

第四話 驚愕の市場、不穏な兆し──魔の国、黒曜石こくようせきの大魔城オブスガル。その大広間。 肩をすくめるようなラヴナの言葉に上魔王じょうまおうシェーングロードは無言で頷き、話を続ける。「ラヴナの言う事も同感ではある。まず、この黒曜石の都に...
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第三話 火急の事案

第三話 火急の事案──西の櫓やぐら、バルコニーをのぞむ部屋 クロウディアとの手合わせを終えたルインは腕の怪我をシェアに診てもらっていた。しかし、シェアはルインの傷跡を何度も注意深く見ては首をかしげて困惑している。「ルイン様、こうして見ている...
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第二話 影と鎖

第二話 影と鎖──西の櫓やぐら、午後。 ルインの思わぬ申し出に、影人の皇女クロウディアは驚きの声を上げた。「ええ⁉ もう私と立ち会い? ……こんなに早く? ……本気なの?」「早い方がいいだろう? それに覇王ウロンダリウスの霊廟れいびょうの探...
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第一話 依頼の山

第一話 依頼の山 魔の国キルシェイドの首都、『黒曜石の都』オブスグンド、その大城壁の西の櫓やぐら、眠り人の仮の寝所。 暑くも寒くもない、快適な春の朝だった。気分良く目覚めたルインは周囲を見回し、天井には既に朝の光が照り返しており、今日も良い...